創業1653年!和紙の老舗、小津和紙へ行ってきた。<小津史料館・小津和紙照覧編>
東京都中央区日本橋、東京メトロ日比谷線 小伝馬町駅から徒歩5分、小津和紙さんへお邪魔してきました。ご案内いただいたのは、副店長の高木さん、ハキハキとした話し方をされる半被がよくお似合いの男性。早速、エレベーターで3階へと案内していただきました。
小津史料館・小津和紙照覧
広々とした空間に、丁寧に展示された和紙に関する資料や作品。これが和紙!?と思うようなものも並んでいます。
小津和紙の3F『小津和紙照覧』では各地の和紙の作品とともに、室内ベンチの並ぶスペースではプロジェクターによる和紙産地の映像を見ることができます。
映像では、和紙が出来るまでの工程を素材の状態から説明するつくりになっています。
和紙の作りの工程
私たちがほぼ毎日使用している『紙』は、どのように作られているのかご存じですか?
現在のコピー用紙など通常の紙は『洋紙』と呼ばれ、工場で大量に生産されています。
しかし古来日本には独自の『紙』文化が存在し、その製法も洋紙とは違い繊細かつ熟練の技が必要とされるものとなっています。簡単に言うと『楮(こうぞ)』とよばれる植物の繊維を絡めて圧を掛けて、水分をとばして、乾かしたもの。それが和紙です。
なんと100kgの楮からできる和紙はたったの4kg!
楮の原木
手漉き和紙はその一連の工程を昔からの製法で作成しています。では手漉き和紙ってどのようなものなのでしょうか。原料となる『とろろあおいを混ぜた溶液』簀を敷いた桁ですくい、「紙を漉く」という作業を行ないます。
溶液を撹拌させる ※写真は体験工房にて
桁で溶液をすくい、持ち上げることで溶液から紙の素を濾して紙を漉き、繊維を絡ませ紙を作っていきます。
簀桁(すげた)に漉し残った紙の素を1枚ずつ丁寧に簀から剥がし、重ねていきます。この時点の紙の素は、とろろあおいによって結びついているだけで柔らかいです。簀で漉すために紙自体に簀目(すのめ:簀の跡)が透かしのように残ります。この簀目が手漉き和紙の象徴ともいえます。
重ねられた紙は『ためがみ』とよばれ一晩放置して水抜きをし、60~65%の水分にします。こうして圧さく機で脱水した後、天日で乾燥させます。板状になるまで10日間程かかります。ここでの乾燥の目的は1枚ずつの紙の中で、繊維同士の結びつきを強くするためです。漉きあがった状態で乾燥させれば良いように思いますが、それでは繊維の結びつきが弱く、破れやすい紙になってしまいます。この繊維が結びつき、一枚になった紙を大きな鉄板にはりつけ、全体を乾燥させ繊維を固めて出来上がったものが和紙となります。
手漉き和紙の原料
和紙の製造工程・和紙保存庫の部屋へ移動します。そこでは、原料の実物、楮があり、皮を剥かれた状態も触れることができます。主な材料となるのは『楮(こうぞ)』や『三椏(みつまた)』と呼ばれる植物の繊維。これらの繊維で作られた和紙は薄くて丈夫に出来上がります。
原料つくりの工程を順に説明しますと
1:寒晒し
楮を冬の間に刈り取り、剥皮を行い、川の冷たい流水に2~3日晒します。川で晒すことで日光を浴び、アク抜きも行われます。(現代では川で行わず水槽を用いることが多いです。)
2:目かき
一緒に入ってしまったチリなどのゴミを丁寧に手作業で取り、植物が持つ繊維だけを残します。これを乾かし、漂白を行います。
3:煮熟(しゃじゅく)
原料を炭酸ソーダで煮て柔らかくし、紙漉に必要な繊維質だけを取り出します。
4:再度水に晒し、目かきを行います。
5:叩解(こうかい)
繊維質をたたき撹拌させさらに細かくほぐします。現代では薙刀ビーターと呼ばれる撹拌機を用い、繊維を縦に裂いていきます。なぜ通常の撹拌ビーターではなく、刃を薙刀のようにしているかというと、丸みを帯びた刃を当てることで縦に繊維が裂けやすくなるためです。洋紙は細かく砕いていきますが、和紙は繊維を絡めてつくるために、ながく細長く繊維を裂く必要があります。
叩解した原料は一度脱水を行い、その後再度水に溶かし「とろろあおい」を混ぜます。とろろあおい(黄蜀葵)は葵科の植物で、ねべしと言われます。洋紙には均等するため、くっつけるためにノリを使いますが、和紙のこのねべしはノリの役割ではなく、繊維質を均等にするためのものです。
ここまでやってはじめて原料となるものが出来上がります。
これを漉いて和紙を作ります。
これら和紙の原料をつくり、紙漉きの準備をすることを『紙をたてる』といいます。
手すき和紙は世界遺産
日本の無形文化世界遺産は2018年の来訪神までの段階で21あります。2013年の和食が世界無形文化遺産に制定されたことは話題になりましたが、その翌年の2014年手漉き和紙の技術も制定されました。石州半紙(島根県)、本美濃紙(岐阜県)、細川紙(埼玉県)がこれにあたります。
漉き和紙の技術は世界に認められるほど繊細で緻密、熟練の技が必要とされます。
ここ数年ではヨーロッパの方々がこぞって最薄の和紙を購入して行くそう。何に使用するかというと、絵画の修復にもちいられるそうです。和紙は薄くても強度が強いため、傷んでしまった絵画のキャンバスの裏から貼るなどの修復が難しい絵画にも向いているとのこと。
まさに日本が世界に誇る技術のひとつでもあるのです。
靴下、カーディガン、今治タオルなど…、全て和紙製品です。
どれも紙とは思えないような手触りで、使い心地もよさそうに感じました。もちろん紙なので吸収率も抜群です。風になびく薄いレースのような和紙の展示もありました。
他にも、ギャラリーや文化教室、小津史料館(中央区まちかど展示館)にて360年続く小津和紙さんの歴史が展示資料とともに説明がなされています。2階には、休憩スペースもあり、ゆったりと和紙の歴史に浸ることができます。
1階のショップも友禅紙、千代紙、色とりどりで綺麗ながめているだけで楽しい。
あまりの綺麗さに、つい購入して折り鶴でも折ってしまいたくなるくらいです。
和紙とともに360年以上紡いでいる歴史と、和紙文化をいっぺんに体験できる小津和紙さん
訪れる際は、しっかり時間ととっていかれると良いですよ。
小津和紙(株式会社小津商店)
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-6-2 小津本館ビル
TEL:03-3662-1184
営業時間:月曜日~土曜日 10:00~18:00
定休日:日曜日・年末年始
URL:http://www.ozuwashi.net/